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2011年9月 3日 (土)

毎年恒例、北海道/知床の旅(シーカヤック 編)

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知床岳にはまたしても登りきることができなかった僕は、
ヤーマン、ちーちゃんと別れ、次に知床岬をぐるりとまわり、
定住者0の海岸を約70キロ、シーカヤックで漕ぎ続ける
「知床エクスペディション」に参加しました。

僕は毎年、新谷暁生さんがコーディネートするツアーに参加しており、
ここ数年は「知床シーカヤックシンポジウム」のタイミングで知床入りしていました。
これは通常のツアーに加え、カヤック界の超有名人がゲストとして招かれ、
ともに海を漕ぎながら、知床、海、シーカヤックについて考えを深めようというもの。
しかし、今年の「知床シーカヤックシンポジウム」には仕事のために参加できず、
通常のツアーである「知床エクスペディション」に参加したわけです。

昨年の模様は、こちらを。
ついでに、新谷さんの著書の最新刊については、こちらを。
また、新谷暁生さんのHPは、こちらを。

とにかく、すさまじく面白い海の旅であり、
新谷さんと海を漕ぎ、海岸でキャンプ生活をすることは、
たんなるシーカヤックの旅ではなく、「異文化体験」であると、僕は思っています。
焚き火や料理などの新谷さんの野営技術、風と波を見る状況判断、
日本と世界のアウトドア的問題に対する思考方法など、
一般的な“アウトドア”とはまるっきり違うものなのです。
とにかく“目から鱗が落ちる”体験の連続なのですよ!

しかしまあ、どのくらい僕が新谷さんと知床を
シーカヤックでまわることに熱を入れているか。
ひとつの目安といえそうな話をすれば‥‥。
アウトドアライターという職業の僕ですが、
仕事でガイドさんと山や海というフィールドに出ることはあっても、
「プライベート」かつ、費用は「自腹」という形でツアーに参加するというのは、
唯一「知床エクスペディション」および「知床シーカヤックシンポジウム」だけ。
それだけの価値がある体験ができるのは間違いなく、
周囲の人すべてに、いつもいつも薦めている「体験」なのであります。

ところで、漕ぎ出す前に、僕はいつもの「儀式」をしました。
その儀式とは‥‥。
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こいつはカヌービルダーの松原秀尚さん(インディアンカヌークラフト)
作ってもらったマイ・パドルで、通常はワンピース(全体が1本の木)なのだけど、
持ち運びのことを考えて、2ピース(2分割)にしてもらったもの。
カヤックのルーツであるアリューシャンのパドルを忠実に再現しつつ、
オーナーが使いやすい長さ、太さ、ブレードの形などをアレンジしてくれ、
(僕の2ピースというスタイルも、そのなかのひとつ)
じつに使い心地がよく、しかも使う喜びがある、そんなパドルなのであります。

だけど、2ピースにしてもらったことで、
使用する前に1本につなぎなおす必要があるんです。
そのためには継ぎ手の部分に専用の木の板をあてがい、
そのうえで、太めのコットンの糸で強く巻いていかねばならず、
これがけっこう気を使う作業。
しかし、漕ぎ出す前にゆっくりとひとりで糸を巻いていくという「儀式」を行っていると
心が落ち着き、同時にやる気もみなぎってくるというわけ。

松原さんはマッシャー(犬ぞり使い)としても有名で、
そのあたりのことは松原さんのブログを見ると、よくわかります。
興味のある方は、ぜひ。

そんなわけで、接続し終わったパドルが、こちら。
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これがもう、芸術品のような美しさ。
いや、芸術的ではあるのだけど、それ以上にすばらしい実用品。
もっときちんと写真を撮っておけば、この絶品さをもっと伝えられたのに。
これももちろん、すべてが僕好みのオーダーメイド。
とはいえ、僕はそれほどカヤックの技術に自信があるわけではないので、
使いこなせているかというと、そのあたりは微妙なのですが。
とにかく、このパドルを使うのも、知床での喜びのひとつなのです。

出発前の話が長くなりすぎました。
さて、今回の参加者はベテランからカヤックが初めてという初心者まで、計10名。
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晴天のもと、出発は西海岸のウトロから。

日程は1週間で、そのうち無人の海岸で野営するのは通常4泊。
日本国内でもトップといえるほど気象条件が厳しい知床なので、
日程には余裕を持たせているのです。

知床は日本有数の厳しい気象条件だと、先に書きましたが、
今回は「これが知床?」と思うほど好天で、海はベタなぎ。
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羅臼岳から続く硫黄岳を見ながら、のんびり漕ぐだけで、
どんどん先に進んでしまいます。

初日のキャンプ風景。
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知床では夏でもダウンがほしくなるほど、夏でも寒いことが多いのに、
夕方になってもTシャツで問題なし。

翌日は早朝から行動を開始し、難所で知られるルシャ川を楽々通過。
川に沿って吹き出す台風以上の突風で、
カヤックが横倒しにされるような場所なのだけど、相変わらずベタなぎ。
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この写真の真正面に見えるのが、知床岳。
そう、いつも海から見ていたからこそ行ってみたかったのだけど、
結局、いまだ登れていない知床岳。
いうまでもなく、つい数日前に登りきれなかった知床岳であります。
一見ゆるやかに見えるけど、周囲のほとんどは崖で囲まれているんです。
この山頂へは、また挑戦しないといけないなあ。

海辺にはヒグマがうろうろ。この写真は母が子を連れた2頭です。
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こんな感じで、今回はたしか15~16頭のヒグマを海から見ました。
毎回のことなので、ヒグマ慣れしてきた僕でも、やはり感動。
とはいっても、陸上ではあまり会いたくはないですが。

新谷さんの作るメシは、いつもながらの「男メシ」。
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今回は10人分なので、量としての迫力はそれほどでもありませんが、
ニンニクたっぷり、一口では噛み切れないほどデカいニンジン、
そして巨大なキクラゲなどに、さらにゴツい豚肉の塊を使い、
すさまじくうまいカレーなどを作ってくれます。

メシの量は食いきれないほど。
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太い流木を2本並べて火をおこし、
環境に配慮するために、その下に鉄板を敷いた焚き火の仕方も参考になるはず。
炭の上じかに鍋を置いて熱の調整をする方法は、まるでダッヂオーブンのようです。

2日目のキャンプ地は、いつもすばらしい夕日を眺められる場所に。
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いまだベタなぎの海に、夕日が光り輝いています。

こちらはいつも写真に撮ってしまう、カシュニの滝。
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海に直接降り注いでくる滝の真下までカヤックでいけますが、
その頭上からの水圧のために、脱出できなくなる人も。

3日目、あまりにもスムーズに岬先端部に到着。
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上陸して、だだっ広い草原を眺めます。
本当はこの写真でも小さく写っている灯台まで歩いていけるのだけど、
今回は近くにヒグマが居ついているらしく、やめておきました。
昨年、ここまで海岸線を歩いてきたなあ。

再び漕ぎ出して、最先端部を通過。
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先端部だけあって風の影響を受けやすく、
このあたりはものすごく荒れていることが多いのだけど、
今回はいまだベタなぎ続き。
いつもはパドルを動かすのに必死で写真を撮る余裕もないほどなのに、
いくらでも撮影できちゃって、拍子抜けするほどでした。

そして、岬を羅臼側にまわりこんでも青い空。
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この写真でいうと崖上の草原で、昨年はものすごくカッコいい写真が撮れました。
『PEAKS 7月号』に掲載された見開きのカット
(ブログでは2枚目の写真)のことです。
同じ場所の陸上からと、海上からのカット、見比べてみると面白いかも。

こちらも難所で知られるペキンノ鼻。
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ベタベタの凪ぎのなかを、簡単にスルー。
反対側にまわってから上陸し、丘の上にある鳥居に参拝しました。
で、その付近から撮影したのが、今回のブログのいちばん最初のカットというわけ。

その後、すぐ近くのペキン川の河口付近で、3泊目。
というか、これまであまりにも順調に進みすぎているために、
そこにはあえて4泊目もして、ゆったりと知床の自然を楽しむことに。
要するに、“好天続きゆえの停滞”。知床とは思えない、贅沢な時間です。

そんなわけなので、参加者は冷たい沢の水で体を清めたり、
人によっては水中眼鏡でオショロコマ(エゾイワナ)の観察をしたり。
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潜らなくても、オショロコマが群泳する姿は、陸上から確認できるほどです。

昼寝したり、酒を飲んだりしてダラダラしていると、天候が悪くなってきたような。
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この後、雨が降り始め、風もそこそこ強くなってきました。
冗談半分で、「真の知床を知るために、悪天候を待つ停滞」などと
一部の参加者は話していましたが、たしかに僕もそんな気分でした。
少しくらいは天気が悪く、漕ぐときに緊張感がないと知床っぽくなくて。
本当のことをいうと、冗談でも「悪天候を待つ」などとはいえないくらい
荒れ狂ったときの知床は恐ろしいのですが‥‥。
僕が海ではじめて沈(転覆すること)をしたのも、悪天候下の知床だったし。

最終日、小雨のなかを出発。
少しすると、1週間ほど前に見た、懐かしい風景が。
僕は今回、海を漕ぐ前に山も歩きましたが、
そのときに海岸線でキャンプをした場所です。
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中央の岩の左に、ヤーマンたちとテントを張ったんですねえ。
これも見比べてもらうと、面白そう。

さらに漕いでいくと、2つにわかれたウナキベツ川の河口と、観音岩(写真右)。
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この大岩の影でも3人でキャンプをし、翌日からこの川に沿って標高を上げ、
知床岳を目指したのでした。登りはじめのタイミングでいえば、
わずか10日程度前のことなのに、はやくも懐かしい気がするから不思議。

海はそこそこの荒れ具合のまま。ゴール地点の相泊に近づいていきます。
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さすがに凪ぎとはいえないけれど、
ひどいときの知床を知っていると、これくらいはぜんぜん。

相泊にかなり近づいたころ、陸上を見ると、引率の大人に連れられた
おおぜいの子どもたちの姿が。
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これ、以前から噂に聞いていた「ふるさと少年探検隊」のご一行。
羅臼の子どもたちが岬まで徒歩で歩いていくという地元の恒例行事で、
その様子は関屋敏隆さんによる絵本『ぼくらは知床探検隊』にも描かれています。
このこどもたちの探検隊、いつか取材してみたいものです。

そういえば、僕たちのツアー一行の参加者のなかで、
ペキン川、それも水中でカメラをなくした人がおり、発見はすでに諦めていたのですが、
なんとこの少年探検隊が偶然発見してくれ、後日手元に戻るという奇跡が。
少年探検隊、遺失物発見隊としても、すごいものです。

かすかに赤く小さい灯台が見えてきて、やっと相泊の港へ。
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順調すぎた知床のシーカヤックの旅が、これにて終了。

この旅のこと、知床のことは、いくらでも書こうと思えば書けるのですが、
それにはかなりの気合が必要なので、このくらいにしておきます。

やっぱり知床は、僕にとって日本で一番の場所。
また来年も、僕は知床に間違いなく行くことでしょう。

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海(うみ)」カテゴリの記事

コメント

やっぱり、シカが似合‥(笑)
アウトドア・セレブ‥?(笑)
あまり見たことない庄太郎さんの突っ込みが おかしくて ふいちゃいました♪
森山さんのブログと並行して見すると確かに面白いですね。
似てるけど、全然違う視点と表現。
面白いなぁ♪
実は、今まで、カヤックは どうも怖いイメージでした。でも庄太郎さんのブログを読んでるうちに『ロマンはどこだ?』『ここだ♪』って。
映画の見過ぎか(汗)

地上と海上の2つの景色を巡る旅。
ロマンだなぁ~
まるでガイドされてるような‥一瞬、旅をしてるような気持ちになれました。
あーっ山に行きたい!

あと、
前回の山行きでトレッキングポールをダブルにしたら、快調でした♪アドバイスありがとうございました。

投稿: aiko | 2011年9月 5日 (月) 22時50分

お久しぶりです!
お元気そうでなによりです

覚えていらっしゃいますか??
昨年、知床を一緒に漕いだオウジロウです
その節は、いろいろ面白い話をきかせてもらったりありがとうございました

実は今、テレビで相泊の番屋のおっちゃんがでてきて、びっくりして懐かしくって知床EXPで検索したら庄太郎さんのページを発見しました!
ライターとのことでしたが、本当にたくさん記事書いているんですね....。
今度、本屋で探してみます

レポート読みました
鮮烈に記憶がよみがえってきて、貴重な体験をしたんだなって改めて思いました

あれから、食生活が少し変わりました
袋ラーメンはみそ一途です
そして、しょうが入り。

体に気をつけてくださいね
そして、またどこかでお会いしましょう!

投稿: 欧次郎 | 2011年9月 6日 (火) 00時30分

aikoさま

同じようなスポットを山と海から見ると、
視点が変わって、非常に面白いです。
こういうことができるのって、
日本ではあと、屋久島とか西表島などの島くらいかも。
トレッキングポールも快調のようで、なによりです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
欧次郎さま

おひさしぶりです~
知床には、何度も行ったほうがいいですよ。
行けば行くほど知識が深まり、いっそう面白くなります。
相泊の番屋の隣では今年、ヒグマがエゾジカを襲い、
小屋の前で一晩、肉を食っていたそうです。
僕たちがカヤックを上陸させたすぐ脇で。
やはり知床はワイルドですね。

投稿: 庄太郎 | 2011年9月14日 (水) 21時08分

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