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2011年10月22日 (土)

北アルプス/黒部峡谷・下ノ廊下(高熱隧道の取材)

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9月後半、北アルプスの奥地、黒部峡谷に行ってきました。
山頂を結ぶ稜線歩きではなく、ひたすらに谷間を歩く特別なルートです。

これは来月に発売される『PEAKS』の取材で、テーマは「本」。
この黒部峡谷の“下ノ廊下”といわれる場所(黒部ダムよりも下流)の地下は、
岩盤温度が160℃以上という高熱地帯なのですが、
水力発電所を作るためにその地中にトンネルを掘っていったという
実話を元にした小説が、吉村昭著『高熱隧道』。
「隧道」とは、トンネルのことですね。
多数の犠牲者を出しながら完成させたトンネル工事の舞台となった
その場所を歩くというのが、今回の目的なのでした。

このブログにその様子をアップしようとして写真をザッと選んでみたところ、
しかしまあ、なんと点数が多いことか‥‥。
話を2回に分けるか、それとも写真を減らすかと迷いましたが、
今回は説明をそこそこにする代わり、写真はたくさん見せる、という方法に。
もともと、このブログの取材関係の山行記録は、
掲載号の事前宣伝も兼ねているので、
詳しくは『PEAKS12月号』を読んでもらいたいと考えております。

それにしても写真の数が多いので、興味のない方は適当にご覧を。
とはいいながら、このルートは北アルプスの中でも僕のいちばんのお勧めルート。
僕が適当に撮った写真でも、そのスゴさが少しは伝わるはずなので、
できればサッとだけでも見てもらいたいと思います。

出発は黒部峡谷鉄道の終着点である欅平。
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小さくオレンジ色に見えているのがトロッコ電車で、
その下に「黒部第3発電所」があります。

登山道を上がって行くと、東に見えるのは
8月に登った白馬三山などを含む、後立山連峰の稜線。
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1時間も登ると、水平歩道が始まります。
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その名の通り、ほぼ水平。
この道はダム建設(黒部第3ダム=仙人谷ダム)に関わる物資輸送でも使っており、
黒部峡谷の左岸に沿い、断崖絶壁を削って作ったモロに人工的な道なのです。

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場所によっては、もしも滑落すると、樹木にさえ引っかかる可能性はなく、
谷底まで数百mも一気に落ちてしまいます。

途中にはトンネルも。
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こんな道が続くこと、5時間ほど。
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同行してくれたカメラマンの岡野朋之さんが、
絶壁を削った細い道の上で、僕に向かってカメラを構えている様子。
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この水平歩道、僕はもう何度も歩いているのですが、
何度歩いても飽きないスゴい場所なんです。

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ルート上でテントを張れるのは、阿曽原小屋の前のみ。
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この場所から仙人谷ダムまでのあいだが、「高熱隧道」になります。

そんな場所だから、当たり前のように温泉も。
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この温泉自体、「高熱隧道」から流れ出しているお湯を利用しているものです。
3連休にかかった日程だったため、登山者でいっぱい。

夜は比較的簡素にカレーライスとスープ。
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SOTOのムカストーブを使って調理しましたが、
そのときの写真をもとに、先日発売された『PEAKS11月号』の
インプレッションページ
を作っています。

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テントを張ったこの場所は当時、宿舎があった場所。

取材ということで、小屋のご主人とともに、
本来は入れない「高熱隧道」のなかにも入ることができました。
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このあたりは小屋もあるので外気が入り込み、
それほど熱いわけではありません。
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ダム管理用のトロッコ電車が今も定期的に走るというトンネル。
小屋の直近は、これでも「駅」扱いで、かなり広げられています。

翌日は仙人谷ダム方向へ。
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仙人谷ダムは現在「近代化産業遺産」に認定されていますが、
このダムを作るために高熱隧道が生まれてきたわけです。
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仙人谷ダムの直下はほとんど水がなく、このありさま。
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ダムができる前の風景を見てみたいものです。

ダムのすぐ下にはトロッコ電車が通る橋も。
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ちょっとわかりにくいですが、ちょうどトロッコ電車が止まっています。

こちらが仙人谷ダム(黒部第3ダム)。
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このダムと、欅平の黒部第3発電所が連動して、水力発電を行っているんですね。
日本一の巨大さで知られる黒部第4ダム(黒四ダム)のひとつ下(下流)にある
ダム&発電所の組み合わせになります。

仙人谷ダムよりも上流部分は水平歩道とは呼ばず、
「旧日電歩道」という名前に。
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だけど、道の雰囲気は大きくは変わらず。
いや、ますます歩きにくく、険しくなっていきます。

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ルート上の名所である「十字峡」。
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黒部川本流の左右から支流が流れ込み、ちょうど十字になっております。

僕たちが取材した2週間後には、この十字峡のすぐ上流で
地震による土砂崩れがあり、死亡事故が発生してしまいました。
来年もここを歩けるかどうかは不明で、なによりも気の毒なことだと思います。

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水平歩道は谷底から数百mも上につけられた道でしたが、
旧日電歩道は黒四ダムに近づいて河床が高くなるにつれて、
川面の位置も接近してきて、いかにも渓流といった雰囲気です。
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まるでフィールドアスレッチックのようなハシゴ群。
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ダムまであと2時間ほどの地点になると、
峡谷もいくぶんひらけてきて、このような雰囲気に。
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ルート上では屈指の規模を誇る内蔵助谷からの支流。
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この内蔵助谷のルートは、黒部峡谷を歩いた10日前に、
僕が雷鳥平から通ってきた場所です。
このあいだもここにいたのかと思うと、
我ながら本当によく、北アルプスに通っていると実感します。

というわけで、このあたりも10日ほど前に歩いた道。
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観光用の放水をしている黒四ダム。
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内蔵助谷を歩いたときの写真と比べると、水量が多いような気がします。

いや~、何度歩いても、ここはスゴい!
あまり説明を書かないつもりだったのが、やっぱり書きたくなってしまうほどに。

繰り返しますが、詳しくは『PEAKS12月号』を。
このブログではほとんど触れていない「高熱隧道」について、
そしてこの黒部峡谷の奥深さについて、知ってもらえると思います。
まだ原稿は書き始めてもいないのですけれどね。

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山(やま)」カテゴリの記事

コメント

高熱隧道の中まで入れてもらったんですねぇ、羨ましいなぁ。
吉村昭氏の『高熱隧道』読んだのは大人に成り立ての頃だったと思うのですが。。。
歩かれたの9月ですか。
雪無かったんですねぇ。
話によると、歩ける期間が1ヶ月も無いようなことも聞きますし。
写真、凄く良いですねぇ。
来年辺りに歩こうかねぇって話しているんですよ。
PEAKS12月号ですか?楽しみにしています。

投稿: 修 | 2011年10月22日 (土) 21時39分

いいですねぇ。今夏黒四ダム自体の上を歩いて室堂に上がりましたが下の廊下にはいつか行ってみたいものです。
ここにこれだけの道を作った先人たちの偉業に敬服するばかりです。12月号も読んでみます。

投稿: ひらき | 2011年10月24日 (月) 20時28分

いつも、庄太郎さんのブログを読み返しては「来年は私も!」と気持ちが弾んでおります。
豊富な写真と丁寧な解説にいつも助けられております、ありがとうございます。 

「水平歩道」は期間限定でしか通行できないと聞いたことがありますが、
本当でしょうか?12月号で勉強します♪

投稿: 永井美保 | 2011年10月25日 (火) 20時36分

ああ!やっぱり!!高橋さんだ!
阿曽原で隣に幕営して、十字峡でモゾモゾしてた二人組の片割れです。どこかで見たことあるな~(笑、すいません)と思いながら、色々探してここにたどり着きました。

歩道+隧道、ホント凄いですよね。問題もありますが、人間ってここまでできるのか~というのが今回の感想でした。深夜3時の温泉も無人で満点の星空がスゴク良かったですよ。

これからも色んな記事楽しみにしてます!

投稿: しましま | 2011年10月26日 (水) 12時21分

修さま

高熱隧道、今年は比較的早く通れるようになったようですよ。
だけど、ブログにも書いたように崩落があったために、
今年はすでに通行止めで、
阿曽原温泉小屋も予定よりも早く小屋閉めするそうです。
来年早めに歩道が補修され、歩けるようになるといいですね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ひらき様

吉村昭さんの「高熱隧道」は、あくまでもトンネル掘りの話なので、
岩壁を削岩して作った水平歩道や旧日電歩道について
詳しく書かれている文献を僕は探しています。
ホント、スゴい道です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
永井美保さま

阿曽原温泉からは下流に当たる水平歩道は
比較的早くから歩けますが(例年8月前くらい)、
上流に当たる旧日電歩道は、残雪がとけ、
さらに登山道の整備が終わった夏以降しか歩けません。
年によって違うけれど、だいたい9月後半から。
で、雪が積もるとまた歩けなくなるので、
1年のうちに1~2ヵ月しか通れないんですね。
以前、結局雪が解け切らず、
1年中通れなかったときもあると
聞いたこともありますが、
それが本当かどうか未確認です。
タイミングを見て、いつか行ってみてくださいね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しましま様

あのとき、十字峡のすぐ上で
テントを広げていた方ですね!
なぜあそこにテントをたてていたのかと、
同行したカメラマンさんと話題にしていました。
どこかの沢に入っていくのかも、とか。
「PEAKS]の記事、楽しみにしていてください。

投稿: 庄太郎 | 2011年10月26日 (水) 18時57分

雑誌やブログいつも拝見しております。
高橋さんの影響で、マックパックのグリセードクラシックに買い替え今年3回縦走に行きました。渋くて、背負いやすく愛用しています。
さて、自分も10月初め(地震のあった日)に、欅平から阿曽原温泉を通り、池ノ平、ハシゴ谷乗越、内蔵助、黒部ダムまでを縦走してきました。
今まで一番楽しく、わくわくした登山となりまさに山「旅」でした。来年また行きたいと思います。
地震の影響か、内蔵助の丸山東壁で大規模な崖崩れが発生しており、登山道が一部なくなっていました。
当日、阿曽原温泉小屋で下ノ廊下での事故も聞きました。残念なことです。

投稿: やんも | 2011年10月26日 (水) 21時11分

やんも様

地震のタイミングで、あの場所にいたんですね。
無事でなにより。
雲切新道から池ノ平までは大変だったのではないでしょうか。
しかし、そのルートだと一度も山頂を踏まないことになりますね。
僕も山頂にはほとんどこだわりがないので、
その山旅の面白さ、よく理解できます。

投稿: 庄太郎 | 2011年10月28日 (金) 00時13分

阿曽原小屋です。
十字峡の崩落現場の調査をしてきたので、阿曽原のHP見てみてください。 

投稿: 小屋主 | 2011年11月 7日 (月) 09時50分

小屋主さま

先日は取材にご協力いただき、ありがとうございました。
雑誌の取材とはいえ、もともと個人的にも非常に
興味を持っていた場所なので、
隧道内を見学できて感激しました。

HPで十字峡上流の崩落箇所も確認いたしました。
手間暇かけての調査には頭が下がります。
じつはすでに今回の原稿は書き終わりましたが、
翌年にならないと確実な通行状況はわからないと考え、
「来年の通行は未定」としておきました。
関西電力さんにも頑張ってもらって、
安全に通れるようになるといいですね。
後ほど掲載誌をお送りいたしますので、
ご覧になってください。

投稿: 庄太郎 | 2011年11月 9日 (水) 00時05分

こんにちは。黒部渓谷のブログを読んでたらコチラのブログに辿り着きました。写真が綺麗でオシャレなブログですね。羨ましいです。

投稿: 萌音 | 2014年3月12日 (水) 22時52分

萌音さま

黒部峡谷、行ってみたんですか?
まだならば、今年のうちにぜひ。

僕もまた行ってみたいと思っていますが、
今年のうちに行けるかな。
できれば内蔵助平と組み合わせたいと考えているんですよ。

投稿: 庄太郎 | 2014年3月13日 (木) 11時48分

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