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2011年10月19日 (水)

北アルプス/内蔵助平&ハシゴ谷乗越(前編)

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以前、ここで紹介した「立山黒部アルペンフェスティバル」での任務を終えた僕は、
このフェスの最終日の朝、テントを撤収するとひとりで山の中へ入っていきました。
目的地は「内蔵助平」と「ハシゴ谷乗越」。フェスが行われている室堂から見ると
立山連峰の裏側にあり、北アルプスでもマイナーな場所といえるでしょう。
ちなみに上の写真中央の平たい場所である「内蔵助平」は
「内」の字は読まずに「くらのすけだいら」と読み、
「ハシゴ谷乗越」の「谷」は「たに」ではなく、地元では「たん」とか「だん」と発音し、
つまり「はしごだんのっこし」と発音します。マメ知識でした。

この内蔵助平とハシゴ谷乗越、僕が来年3月に出版予定している
「北アルプス」をテーマにした書籍で紹介しようかと思っている場所。
なので、このルートを選んだのは「調査」の意味合いが非常に強いのですが、
それ以前に、もちろん自分好みの場所でもありました。
ただし、この2ヵ所は同一線のルート上にはなく、
ハシゴ谷乗越に行くためには、内蔵助平に荷物をデポして
わざわざ往復する必要があり、ちょっと面倒です。

まずは、雷鳥平のキャンプ地から真砂岳方向へと稜線を登っていきます。
振り返ってみると、ドンとそびえるのは、昨日登ったばかりの奥大日岳。
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下のほうのキャンプ地にはいくつものテントがあり、
フェスの関係者や参加者がウロウロしているのがよく見えました。

真砂岳への登山道は単調ながら歩きやすく、ドンドン高度を上げられます。
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実際の山頂は、右でいちばん高く見えるポイントではなく、左のほうですね。

稜線に上がると、別山の向こうに剱岳の山頂が覗いておりました。
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山を歩いている人もそこそこ降りましたが、室堂の混雑に比べると実に静か。
この稜線の道、テントを背負い、昨年の冬にも歩いたっけ。

真砂岳を背後に、内蔵助山荘。
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外で作業をしていたご主人に挨拶し、
今日、誰か登山者が内蔵助平へ下りていったか尋ねると、誰もいないとのこと。
おそらく今日、僕以外の人間は、このルートを使わないということで、うれしくなります。
ご主人には今日のうちにダムまで歩くのかと尋ねられましたが、
僕は内蔵助平で野営し、翌日はハシゴ谷乗越から剱沢へ
往復することを伝えておきました。書籍のための調査を兼ねているために
ちょっとばかり一般的ではない歩き方になっており、
指定地ではない場所で野営することになるため、
そのあたりのことも含めて、お伝えしておこうかと。

内蔵助谷へ下り始めるとすぐに目に飛び込んでくるのが
立山連峰のひとつ、富士ノ折立と、雪渓が残るカール。
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この雪渓から続く内蔵助カールを下りていった場所が、内蔵助平になるわけです。

角度を変えてみると、こんな感じ。
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一見歩きやすそうに見えなくもないですが、
入る人が少ないために整備もそこそこで、しかも急峻な下りも多く、
北アルプスの中でも、相当にハードなルートです。

とけかけているけど、クマのフン。
こんなのがいたるところにあります。
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昨年歩いた針ノ木谷と同じく、クマが多いのは
人が少ない沢沿いのルートならでは。

ロープがつけられている場所も多数。
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とはいえ、このように乾いている地面はいいのですが、
沢の近くで湿っている場所は滑りやすくて難儀しました。

近づいてくる内蔵助平。
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しかし、イタドリに覆われたりしていて道はわかりにくく、
なかなかスムーズには歩けません。

身長以上の段差がある雪渓も。
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はじめは上のほうにまわりこんでみましたが、雪渓上にあがることはできず、
結局、かなり下のほうに歩いていってから、なんとか雪面の上に下り立ちました。

雪渓にはそれほど角度はなく、晩夏の午後ということで
雪面は柔らかくなっており、軽アイゼンなどは必要なし。
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しかし、タイツとショートパンツだと、寒気でヒヤッとしちゃいます。

内蔵助平は近づいているはずなのに、ヤブで視界がきかない場所も。
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クマが出てきたら嫌なので、ときおり「オーイ」などと大声を出してみたり。

途中にあった岩屋。
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これだけ快適そうな岩屋、ちょっと珍しいほど。
平らでいて、乾燥していて、屋根部分の頭上も高く、ここに泊まるのも面白そう。
ちなみに、この巨大な岩には赤いペンキでしっかりと「岩屋」と書かれているので、
ここを歩く人なら、誰でも発見できるでしょう。

で、やっと内蔵助平に到着。雷鳥平からここまで、歩くこと4時間半。
思いのほか時間がかかりました。3時間程度かと思っていたのに‥‥。
以前歩いたことはあったのですが、こんなに大変ではなかったような。
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水が豊富でしかもうまく、すばらしくよい気持ち。
だけどこの内蔵助谷の沢は、増水すると渡ることができなくなるほど荒れ狂い、
これまでに急流に流されて死亡した方や、救助を要請したグループなども。

さて、この「内蔵助平」の「内蔵助」とは誰のことなのか?
じつは内蔵助とは、越中の武将、佐々成政の幼名。
佐々成政といえば、立山南部のザラ峠~黒部川~針ノ木谷を
真冬に横断したという
伝説で知られていますが、
そんな“定説”ルート以外にもいくつかの説があり、
そのひとつが、この内蔵助平を経由したというもの。
しかし、この内蔵助谷、冬は雪崩れも多そうだし、どうなんでしょう?

ともあれ内蔵助平は黒部の谷のなかでは珍しく広々とした場所で
遠くから見ていると、非常に気持ちよさそうに見える場所なんです。
昨年、後立山南部の山行の様子をここで紹介したのですが、
そのときに黒部川を挟んだ反対側の稜線から撮った写真が以下のもの。
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この別山の真下にある平らな場所、行ってみたくなりませんか?
だけど、実際に内部に入り込んでみると、樹木で視界がさえぎられ、
それほど開放感があるわけでもないのですが。

沢から少し離れた場所に野営適地を見つけ、ビバークの準備。
いわゆるキャンプ指定地ではありませんが、このような大きな沢沿いには
渓流釣りをする人や、沢登りをする人が昔から利用している
このように整地されたポイントが必ずどこかにあるもの。

ただ、この場所では周囲に釣り糸などの仕掛けや食べ物のパッケージが
たくさん捨てられていたのが気になりました。なぜ、捨てて帰るのだろう?
だけど、僕にも本来はキャンプ地ではない場所で
一晩過ごすという申し訳ないような気持ちがあり、
立ち去る前にはそれらのゴミを拾い集めて持ち帰り、
自分が泊まる前以上にきれいな場所にしておきました。

しかしまあ、この日は内蔵助山荘を出た後、ホントに誰にも会いませんでした。
そんな山深い場所でひとり過ごす夜、ワクワクしちゃってたまりません。

というわけで、翌日の朝にはハシゴ谷乗越へ。
(後編に続く)


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山(やま)」カテゴリの記事

コメント

毎回毎回、凄くたくさんの山情報、グッズ情報。
ありがたく、楽しく、読ませて頂いてます。
自分はビール関係のライターもどきですが
ブログの方、手を抜きまくってます。
見習おう

投稿: マイケル | 2011年10月19日 (水) 12時33分

マイケルさま

ブログはけっこう手を抜いて書いていて、
例えば北アルプスの山の名前ばかり羅列しても、
読んでくれた人はどのあたりの場所なのか
わからないのではないかなどとも思っていたりもします。
しかしあまり正確に書きすぎると
なんだか仕事と変わりなくなってしまい、大変だし、と‥‥。

それとは関係ありませんが僕は数年前に、
ケンタッキー州までバーボンフェスティバルの
取材に行ったことがあります。
酒にはまったく強くないのに、なぜか。
でもけっこうよい経験になりました。

投稿: 庄太郎 | 2011年10月19日 (水) 16時45分

バーボンフェス、(笑)10年間毎年行ってます。仕事と遊び半々で。
あんなアメリカの雲ノ平みたいな所によく行かれましたね。
バーボン、ビールネタはブログでどこまで書いて良いか迷う所
ギャラ出ないしな〜なんて考えながら書いてるからイカンのだろう。
素直な心で更新しないとな〜

ビールの記事は毎月Peaksの姉妹誌Lightningで2ページ連載中。
渋谷に寄ってください、山の話ライブでお聞かせくだされば
俺持ちですんごい美味しいビールごちそうします。
あ〜山行きたい・・・

投稿: マイケル | 2011年10月20日 (木) 16時43分

マイケルさま

Lightningで連載をお持ちなんですね。
今度、見てみます。

しかし、あのバーボンフェスに行ったことがある人に
こんなブログで出会うとは。
さすが酒のプロですね。

投稿: 庄太郎 | 2011年10月22日 (土) 02時17分

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