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2012年5月 9日 (水)

八重山諸島/西表島-4(無人の海岸から山を越えて川、海へ)前編

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旅から帰ってきてからは、すでに1ヵ月以上、
前回の「八重山諸島/西表島-3(古見岳~ユツンの滝)」からも
かなり経ってしまいましたが、西表島の話の続きです。
自分自身、前に何を書いたのか忘れつつあるので、適当に書き進めていきます。
パックラフトを使った島横断と古見岳は取材でしたが、ここからはプライベート。
カメラマンのカメちゃんは、ここで一足先に帰っていきました。

この時点で、旅の日程はまだ半分。
残りの時間を使って、僕たちは西表島の無人地帯である南海岸を歩き、
その後、山に入って分水嶺を越え、川から反対側の海に出て、
すべて徒歩で人間の世界に戻るという、
人力で「海、山、川」を移動していく旅を企てておりました。

そんなわけで、前日のうちに移動しておいた南風見田のキャンプ場から出発。
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ヤーマンのバックパックには、モリ先をつけた長い竹。
結局、邪魔になって途中で外してしまうのですが、
道中に獲物がいれば、すかさず捕まえてしまおうという心意気が現れております。

この日の目的地は、鹿川という場所。
じつは昨年、僕はひとりで行ってみようとしたものの、難所を越えることができず、
敗退しております。つまり、今回はリベンジの意味もあったのです。
ともあれ、今回も出発してから当分のあいだは昨年と同じ道なので、
この海岸歩きに興味がある方は、昨年にアップしている西表の話を見てください。

昨年と同じ場所なので、説明は簡略化して、写真集的に進めます。
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下の場所は、昨年、僕がビバークした付近。
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正式名称は別にありますが、ごく一部では
「庄太郎ビーチ」としても知られる浜であります。
昨年よりも水量は少ないですが流水があり、ここで飲み水を補充。

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数時間歩いているうちに潮が引き始め、
ときには太腿までつかりながら海の中を歩いていきます。
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砂地や岩の上よりも、このほうが圧倒的にラクなんです。

歩きやすくなると同時に「獲物」も獲得しやすくなります。
僕の手の上にあるのは、タコの足。
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このときはタコが岩の隙間に入り込んでしまい、
手元に残ったのはちぎれた足が数本だけ。
上の写真ではかがみこんだツッチーが
執拗に「本体」のほうを捕まえようと、まだ頑張っております。
僕はこのときも右手が腫れて巨大化したままだったので、思うように手を使えず、
もろもろの採集は2人のほうが楽しそうにやっておりました……。

このタコの足はそのまま口に入れ、吸盤が口内に吸い付くのを面白がりながら咀嚼。
ちょっとかわいそうな気もしますが、足を数本食べられるのと、
丸ごとすべて食べられてしまうのとでは、どっちのほうがタコにとってよいことなのか。

そのうち現れたのが、昨年僕が越えることができなかった「ナーピャ」という難所。
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リーフの切れ目で、サメが泳いでいるのがよく見られる(らしい)場所であります。
しかも獰猛なことでしられるシュモクザメだったりして。
だから、あまり泳いでは渡りたくないんですね。

この後、3人で道を探すこと1時間以上。
1度山に入ってから乗り越える「巻き道」があるはずなのですが、
地図を元に地形の弱点を探したりしても、まったくどこにあるのかわかりません。
またしても、僕はここで敗退しなければならないのか……。

下の写真のような海岸を3人バラバラになりながら、途方に暮れる我々。
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南風見田からの道中ですれ違った人がいたのですが、
その人も鹿川まで行こうとしたけれど、巻き道が見つけられず断念したとのこと。
なにしろ地図にも載っていない道で、営林所の方やヤマネコ調査の人以外、
こんな場所を歩くのはよほどの西表島好きの者くらいなので、明確ではないのです。

しかし、今回は3人がかりで、とうとう見つけました。
ナーピャから戻ること数百m、僕たちが違う場所に続いていると思っていた踏み跡が
途中で分岐していて、一方が目的地の鹿川方面に続いていることを発見したのです。
海岸から持ってきたブイが目印になっていた分岐はかなり山奥で、
海岸からは数十mも上だったので、それからもまた大変。
再び海岸に戻ってバックパックを背負いなおし、もう一度山の中へ入り、
ものすごく滑る地面、トゲのある植物になんとか対処しながら標高を上げていき、
いったん分水嶺まで登ってから、不明瞭な踏み跡をたどって西に進みます。
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上の写真でヤーマンのバックパックについている白いものはレジ袋。
海岸で集めていた数種の貝やシャコエビなんかが入っております。Img_6160a

ヤブのなかを延々と進んでいき、間違って一度は崖の上へ。
しかし、そこからはちょうど難所の一端が確認できました。
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上の写真の左側ですね。ここから見ると、ぜんぜん難所には見えませんが。

そして再び海岸に下り立ち、あとは鹿川の浜まで歩くのみ。
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だんだん日没が近づいてきて、日光がオレンジ色になってきました。

太陽が島影に隠れるのとほぼ同時期に、鹿川の浜の一端に到着。
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それから海岸をウロウロしてすごしやすい場所を探し、テントの設営を行いました。

夜は焚き火。
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この場所までは、いくらか歩いてくる人はいるようなので、
何ヵ所かに焚き火の跡があり、野営した形跡も残されていました。

翌朝。この日は、予定通り、各自フリータイム。
この浜で何もせず、ただただボーっとしていました。
釣りをしたり、海岸で獲物を探したり、酒を飲んだり。
僕が昼寝しているうちに、2人は次の日のルートを偵察にも行ってくれました。
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この日、僕がいちばん気持ちよかったのは、
海岸の大きな岩の上に横たわって昼寝をしていたとき。
その場所からは、鹿川の浜が上の写真のように見えました。
中心あたりに、かすかにブルーとグリーンの異物があるのがわかるでしょうか?

ズームしてみると、下のような感じ。
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2人は座ったり、寝転んだりして、本でも読んでいるようでした。

違う方向から同じ野営地を見ると、下の写真になります。
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貸しきりの浜。まるでプライベートビーチのようであります。
テントは2つだけで、ツッチーは今回ハンモックを使っていました。

この浜でも発見できたイリオモテヤマネコのものと思われる足跡。
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昨年見たものはたぶん本物だと思うのですが、今回の足跡はちょっと自信なし。
でも、ほかにこういう足跡をつける哺乳類って、西表島にはいないはずなんだけど。

以前、この鹿川には集落がありましたが、今はほとんど痕跡が残っていません。
しかし、こんな小さな洞窟があり、誰かが泊まったような跡も。
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でも、この洞窟って、鹿川が廃村になった後、
少し前までは頭蓋骨などが転がっていたというんです。
ここでは詳しいストーリーは省きますが、かつて西表島に流れ着いた朝鮮半島の人を
この島にあった炭鉱で強制的に働かせ、
体が衰弱したあとは鹿川まで連れて行き、この洞窟に放置したらしいのです。
今は人骨はすべて回収して供養したようですが、
きれいな浜にも暗い歴史が潜んでいたりもするわけです。

話は変わり、僕たちのテントの近くにあった沢。
僕たちはこの水を汲んで、ほとんど煮沸すらせずに飲み水にしていました。
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この沢は小さいのに、僕が大好きな「獲物」がいっぱい。
夜になると「パトロール」と称して、2晩とも数時間おきに狩りに出かけました。

その獲物とは、テナガエビであります。
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テナガエビは基本的に夜行性で、夜になるとエサを探すために
岩影から出てきますが、なぜか行動は日中よりもボンヤリしているんですね、通常は。
だけど、ここのテナガエビは僕のエビ人生のなかで最も敏捷なヤツらで、
わずかな光が当たっただけでビンビンと水上にまで飛び跳ねて逃げていくんです。
採集がものすごく難しく、時間のわりになかなか手に入りませんでした。
ウナギもいたのですが、モリが刺さらず、悔しい思いをいたしました。
しかし、デカい海が目の前なのに、川でばかり猟をしているという不思議さ。

海ではヤーマンが、カニもゲット。
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こちらも焚き火で焼いたヤーマンが採ってきた貝。
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貝は種類によって殻がものすごく硬く、全力で石で割ろうとしても難しいものも。
結局、巻貝は面倒なので、こういう貝ばかり食っていました。

最後に、クッカーのハンドルの新しい使い方。
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こうして焼きたてをつかんでから、しょう油を垂らすと、
ジュワっと香ばしい匂いが漂ってきます。

というのが、海岸歩きの1~2日目。いずれ「後編」もアップしたいと思いますが、
その3日目が今回の西表島の旅でいちばん面白かった日なのでした。

(続く)

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