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2013年1月 6日 (日)

北アルプス/千丈沢~槍ヶ岳~天上沢 (廃道の谷歩き)-1

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昨年も繰り返し行ってきた日本の山々。
北アルプスだけでも縦走を中心に10回程度になりました。
その数々の山行の中で、いちばん面白かったものはといえば、
間違いなく「西表島のジャングル&海岸歩き」と、この「槍ヶ岳」。
といっても、9月の槍ヶ岳登山のように一般登山道を使うのではなく、
特殊ルートを使った山行でした。

そのルートは、以下の通り。珍しく地図まで載せてみます。
緑の線が歩いたルートです。
Fddd
高瀬ダムから、上の地図の右上の湯俣まで歩き、そこから沢沿いに南下。
槍ヶ岳北鎌尾根の西側にある千丈沢沿いに標高を上げ、
千丈乗越から西鎌尾根に上りつめて山頂へ。
さらに東鎌尾根の表銀座コースで東に歩き、
水俣乗越から天上沢に下り、再び湯俣に戻るという
「沢~尾根~山頂~尾根~沢」というルートです。
左下の青い丸が槍ヶ岳山頂で、ピンクの☆印が野営を行なった場所になります。

槍ヶ岳の地形をザックリいえば、東西南北に4本の尾根が延び、
そのあいだには4つの谷ができています。
そのなかで登山道がない尾根は、以前ここでも紹介した北鎌尾根のみ。
沢に目を向ければ、南東の槍沢、南西の飛騨沢にも登山道がつけられていて、
どちらも槍ヶ岳へのメインルート的存在。
しかし、北西の千丈沢、北東の天上沢には登山道がないんですね。
今回は、その千丈沢、天上沢を使い、槍ヶ岳周辺を歩いたわけです。

これら2つの沢にはかなり昔には登山道がありましたが、
ごくわずかな年月だけ使われただけで、今は消失。
僕はそんな廃道の痕跡を探し、北アルプスの歴史を確認したかったんです。
だから今回は登山道がない千丈沢&天上沢がお目当てで、
槍ヶ岳山頂自体は2つの沢を結ぶ途中、
通りすがりに寄っただけという感覚でした。
完全に自分の興味を満たすために考えたルートなので、
仕事にするつもりもなく、まったくのプライベート。

現在の山地図は役に立たないので、現在の国土地理院発行の地形図とともに、
約80年前、50年前、30年前の山岳地図も持っていきました。
こういう地図を見比べながら歩くのが、じつに楽しい!

そんなわけで、こちらが湯俣。高瀬ダムから湯俣温泉晴嵐荘まで一気に歩くと、
ここで一休みしてから、本格的に出発しました。
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北鎌尾根へのアプローチに使われる天上沢はともかく、
小屋の方によれば、千丈沢に立ち入る人は非常に少なく、
この年も僕たちが向かう前に数パーティが入ったものの、
難所を通過できず、途中で断念して引き返してきたそうです。
そんなこともあり、こんなルートで湯俣から出入りし、
千丈沢ばかりか天上沢も使って
山頂に往復した人はいなかったのではないかとのこと。
昔はいたのでしょうが、少なくても最近はいないのでしょう。

今もわりときれいな姿で残る標識。
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「千天出合」というのは、千丈沢と天上沢が合流する地点で、
これまでに書いてきたように、槍ヶ岳に至る登山道はもはや消失。
その上に書かれている「伊藤新道」も今は廃道ですが、
僕は数年前に、『山と渓谷』の取材で歩いたことがあります。

千丈沢と天上沢が合流して生まれた水俣川。
この吊橋から奥に歩いていくと、千天出合です。
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逆に写真のすぐ手前では、
三俣蓮華岳のほうから流れてきた湯俣川と合流し、高瀬川になります。

水俣川沿いに千天出合に向かう前に、湯俣川方向にちょっと寄り道して、
国の天然記念物の「噴湯丘」を見物。頂点からは熱湯が噴き出しております。
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こんなものがあり、各地に温泉が噴出しているから「湯」俣川なのですね。

湯俣川のなかにも、こんな温泉由来の岩石が。
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このあたりまでは誰でも来られるので、
けっこう多くの方々がピクニック感覚で訪れておりました。

湯俣川の右岸の岩には、伊藤新道の痕跡が。
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岩に刻まれた石場やロープの残骸が、時代を感じさせます。

そして、やっと水俣川を遡行し始め、槍ヶ岳の懐へ。
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こちらは「水」俣川なので、温泉成分はあまり混入せず、比較的透明。
湯俣川では、熱湯が噴き出して足湯ができる場所があったり、
川の中でも水がぬるい場所もあるのですが、こちらはただ冷たいだけ。
数えきれないほど渡渉を繰り返し、川の中を歩いていきます。

倒木も多く、多くの石は浮き、足場は非常に不安定。
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だけど、幸い水量は少なく、できるだけ陸上を歩いていきます。
そもそもこの山行は10月初旬でしたが、
なぜ水が冷たいこの時期にしたのかといえば、一年でもっとも水量が少ないから。
今回の谷は、事前にほとんど情報が入手できない場所だったので、
僕たちはもっとも無理をしないで歩けるタイミングを狙ったのでした。

とはいえ、それでも水量が多くて突破できない可能性もあり、
通過できたとしてもものすごく時間がかかる場合もあるので、
ダメならば途中で引き返すか、稜線に出たら上高地に下りることも考え、
さらに予備日を使うことも考慮に入れておきました。

昔の地図を見ると橋がかかっていた場所まで到達。
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川の中から何本もの丸太が不自然に突き出しておりました。
雪解けの時期は激流になるだろうし、大きな岩も流れてくるだろうに、
いまだにこれだけ残っているのがすごいというか、不思議な気がします。

岩壁のかなり上の方に、ボロボロになったロープが。
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本当はどのように取り付けられていたのか、
そして取り付けられていたとしても、どうやってそれを使って
この場所を乗り越えていけばいいのか、見当もつきません。
だって、あの位置まで水が流れていたとしたら、
あんな細いロープで体が支えられるとは思えないし。
すでに流されてしまっただけで、木や鉄の足場も昔はあったのかもしれません。

繰り返される渡渉。とはいっても、深くても膝くらいまで。
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写真に写っているのは、ライター仲間の麻生弘毅くんと、泥谷範幸くん。
今回は3人での山旅でした。
全員ライターだけど友達でもあり、これは遊びの一環ですね。

数時間歩き、千天出合に到着。もっと先まで進むこともできましたが、
安全に野営できる場所がその先にはないかもしれず、
あったとしても到着までに日暮れになるかもしれないと、この日はここまで。
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今回はいろいろと考えたあげく、1ポールテントの内側に、
ペグも打たずにソロ用のインナーテントを入れるというシステムに。
外気を遮り、体を横たえるスペースはキープしつつ、
悪天候のときは3人でメシを食えるスペースも確保しておきました。
1ポールテントって、タープ的に使えるから、なかなか便利です。

シューズは滑りやすい谷間の渡渉を考えて、モンベルの沢靴を用意。
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しかし岩場や稜線を歩く区間も長いため、いつものスカルパも持っていくという
ダブル状態。ぜったいにどちらかは持ち歩かねばならないので面倒ですが、
現在市販されているシューズでは、
こんなルートを一足で済ませられるものはないので、仕方ありません。

山中、初日の夕方。谷奥はすぐに暗くなってしまいます。
ただし、水はすぐ目の前を流れているので、調理はラク。
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僕たち以外誰もいない谷の奥で、ひっそりとした夜。
いや、本当は絶えず沢の轟音が鳴り響いていたのですが、
心はとても穏やかなのでありました。

(続く)

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コメント

はじめまして。
いつも楽しく拝見してます。

この日、高橋さんご一行と湯俣の手前ですれ違いまして、あまりに感動して声をかけれませんでしたので、ブログに載ったらカキコしようと思ってました…。

スゴイルートいったんですね。

投稿: BB | 2013年1月 9日 (水) 21時39分

BBさま

あれ、どこかですれ違っていたんですか?
そうなんですよ、僕たちはその後、こんなルートを歩いたんです。
あのあたりには他にも廃道が多いので、
また別のルートも歩くことになりそうです。

投稿: 庄太郎 | 2013年1月10日 (木) 09時28分

たまたまネットでこの欄を見つけました。時間がたった投稿で読んでいただければ・・・
私が千丈沢までの宮田新道を始めて歩いたのは昭和25年(歳が判りますね!)それから30年初めころまで千丈沢・槍のアプローチに何回もこのルートを利用しました。湯股から橋までは左岸の壁をへつるような丸太を組んだ道でしたが橋から先はよく整備された道で湯股からこの記事の二日目のキャンプ地までなら5時間弱で歩けました。橋は何回も流されその度に掛け替えられましたが橋のないときはその地点だけはあぶない渡渉を強いられました。何回も宮田新道復活の話が出てますが槍へのアプローチに便利なルートですので新しく開ければよいですね。

投稿: サリマン | 2015年12月14日 (月) 14時27分

サリマンさま

あの道が現役の時に歩かれたことがあるんですね。いや~、うらやましいです。
水が少ない時期ならば、今でも歩けないことはないので
手の入れ方次第では、復活させることができるような気がします。
今の槍ヶ岳は南側ばかりに道が走っていますが、
宮田新道があれば北側にも抜けることができ、
北アルプスのルート選びが多様になって、ますます面白いでしょうね。

投稿: 庄太郎 | 2015年12月24日 (木) 17時26分

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