« 北アルプス/千丈沢~槍ヶ岳~天上沢 (廃道の谷歩き)-2 | トップページ | 『MonoMax 2月号』発売中 »

2013年1月 9日 (水)

北アルプス/千丈沢~槍ヶ岳~天上沢 (廃道の谷歩き)-3

Rimg0610a_2
「北アルプス/千丈沢~槍ヶ岳~天上沢」の第3回目。
書きたいことをかなり省略して(廃道の歴史とか、現地の雰囲気とか)、
無理やり今回で終了させます。
この廃道中心のルートの地図は、第1回目を参照してください。

さて、槍ヶ岳の山頂を経て、僕たちは天上沢に向かうため
東鎌尾根につけられた、いわゆる「表銀座コースへ」。
Rimg0556a
朝早くから行動していたのに、谷間から稜線に出て、山頂に往復してと、
歩きにくい場所を含めて、けっこう行動していたので、すでに昼過ぎ。
だけど、この時点では時間に余裕をもって
キャンプ適地まで下れると思っていました。

ところが‥‥。
ヒュッテ大槍に到着したところ、すでに今年は閉館。
ここでアルコールを入手しようと思っていた麻生くんの顔色が変わりました。
この人は、自身の著書『マッケンジー彷徨』を刊行しており、
テーマが荒野の川旅のはずなのに、書いてあるのは酒にまつわることばかり。
本自体はものすごく面白いのですが、
ともあれ酒がないと生きてはいけない男なのでした。

そこで、僕と泥谷くんはヒュッテ大槍で待機し、
麻生くんだけが、わざわざ殺生ヒュッテまで買出しにいくことに‥‥。
Rimg0567a
待つこと30分以上。寒かったなあ。
だけど、本人はうれしそうですね。
あまり人様にお薦めできる行動ではないけれど、今回はまあ、よし。

冒頭の写真と似たカットですが、こちらがこれから下っていく天上沢。
表銀座コースを歩いたことがある人ならば、
眺めたことがあるはずの風景です。
Rimg0582a
白い線になっているのは水の流れではなく、ゴロタ石。
要するに涸れ沢で、水流はその下にあります。

表銀座コースの名物ともいえる、長いハシゴ。
Rimg0604a
夏ならば渋滞する場所ですが、このときは僕たち以外、だれもいません。

縦走路と天上沢へ下りる踏み跡との分岐になる水俣乗越。
Rimg0623a
ここから先は、再び登山道ではなくなりますが、
北鎌尾根に挑戦する人がよく利用するルートでもあり、
人が歩いた痕跡はけっこうしっかり残っています。

しかし、やはり登山道ではないので整備されているわけではなく、
ものすごく崩れやすいんですよね。
Rimg0626a
下り始め早々に、泥谷くんはスリップ。ルートファインディングのために
先行している僕は、上からの落石に備え、かなり距離をとって進みました。
Rimg0637a
前に北鎌尾根にいくために、ここを歩いたときは雪渓でしたが、
さすが10月ともあって、残っている雪はわずか。

なんか暗くなってきたぞ。
Rimg0643a
この時期は1年でもっとも日が短い時期でもあり、
とくに谷間はすぐに薄暗くなってしまうのでした。

とはいえ、ヘッドライトをギリギリ使わないですむタイミングで、
僕たちは北鎌尾根に登る人たちの多くが拠点としている北鎌沢の出合に到着。

ここで問題は、水場として使えるかもしれない、と期待していた北鎌沢に
水が一切流れていなかったこと。秋になると涸れちゃうんですね。
しかし、耳をすますと、どこからか水の流れる音が‥‥。
あのときの酒の買出しさえなければ、水のある場所まで行けたはずなんだけど、
暗い中を行動するのは避けておきたいし、
僕たちはある程度の水はキープしておいたので、
夜メシはそれでしのぐことにして、一晩を過ごしました。

で、翌朝。
Rimg0648a
この時期は岩しかない北鎌沢の先には、あの北鎌尾根。

こちらは僕のテントの内部。
Rimg0653a
外側はブラックダイヤモンドのメガライトで、
内側は、ものすごく昔に買ったダンロップ。このテントのフライは
加水分解でベタベタになって使用不可能になっていましたが、
インナーテントだけでもこんな感じで使えて、なかなか便利です。

一応、この日を最終日にするつもりで、出発。
ただし、ここから先、千天出合までスムーズに行動できる保障はなく、
予備日の使用や、上高地への撤退も考慮に入れておきました。
Rimg0657a
まだまだ続くように見える岩石ばかりの河原。
だけど、じつは15分も歩かないうちに水の流れる場所が‥‥。
昨日、もう少しだけ歩いていれば、水をふんだんに使うことができたのに。

僕たちは快適そうな場所まで進み、新しい水を入手して、やっと朝メシ。
Rimg0660a
自分自身がうつっている写真も1枚くらいほしいので、
その場所でカットを撮ってもらいました。
僕がフードをかぶっているのでもわかるように、このときは小雨模様。

千天出合が近づくにつれ、歩きにくい場所が多発。
Rimg0669a
半ばヤブ漕ぎのような場所も。
とはいえ、それほどルート探しが難しいわけではありませんが、
千丈沢よりも天上沢のほうが歩きにくいことは間違いなし。
ちなみに、今は廃道の千丈沢側の道には
「宮田新道」という名前がついていましたが、
こちらの天上沢につけられていた道(同じく今は廃道)には、
そのような名前は何もついていなかったようです。

さまざまな先人たちが北鎌への挑戦や沢歩きの際に使ってきたであろう、
平らにならされたキャンプ適地に到着。しばし休憩。
Rimg0676a
河床よりもかなり高い場所にあり、そこそこの大雨でも安全でしょうし、
こういう場所に数泊したら面白そうです。

水量はそれほどでもないものの、このあたりはかなりの轟音。
Rimg0687a
下のような狭く急な滝もあり、落ちたらたぶん死んじゃいます。
Rimg0692a
だけど、わりと明確な巻き道が付けられており、スリップしなければ大丈夫。
湯俣から北鎌尾根に登る人が、それなりに多いことがわかる踏み跡でした。

それからは、水の流れとともに歩くことは不可能なゴルジュになり、
ヤブのなかを高巻いたりと、なんとか歩いて再び千天出合に。
Rimg0716a
ここで野営したのはわずか2日前なのに、
早くも懐かしい感じがするから不思議。

ともあれ、これで僕たちはぐるっと円を描くように
槍ヶ岳&北鎌尾根をまわったことになりました。
あとは一度は歩いた沢を通過し、無事に怪我なく戻れば、計画は成功。
Rimg0721a
曇りがちの天気でしたが、心配していた雨による増水もなくてよかった。

湯俣に向かう水俣川の左岸に、温泉が流れている場所を発見。
Rimg0726a
といっても、まったく温かくはないのですが。
日本の「温泉法」による温泉の定義は、水が一定以上の温度(25℃)か、
低温でも温泉成分が含まれていればいいらしいので、
これは一応、まぎれもない温泉。
あとで湯俣温泉晴嵐荘できいたところ、水俣川のほうでは
温かい温泉が湧き出ているところは確認されていないそうです。

相変わらず冷たい水の中を渡渉。
Rimg0731a
しかし、陸上を歩く時間も長いので、それほど足が冷えることもありませんでした。

出発時に通ってきた、湯俣の吊橋が、とうとう目の前に。
Rimg0741a
今回の山行では、ちょうどスタート&ゴールのラインのような存在で、
ここまで到達すると、感慨もひとしお。
Rimg0742a
3人で握手なぞもしてしまいました。

ああ、トラブルなく計画が遂行できて、満足。
Rimg0748a
沢靴を履いていたので、ソールがたっぷりと含んでいる水分で
足跡がきれいに吊橋へ付いておりました。

再び、水俣川と湯俣川の合流点。
Rimg0756a
正面の湯俣川は温泉成分のために黒く、手前の水俣川は透明のまま。
なんとなく、アフリカの「白ナイル、青ナイル」のような風景です。

湯俣の晴嵐荘では、無事に戻ったことを報告。
Rimg0759a
ここから先は遊歩道のようなトレイルと車道を歩き、高瀬ダムへ。
Rimg0761a
高瀬ダムの先には、9月に歩いたばかりの船窪岳
こんな感じで、山中3泊、家を出て5日間の山旅が終わったのでした。

それにしても、面白かった‥‥。
もともと北アルプスの廃道や新道にはものすごく興味があったので、
このような山行を毎年行なうことを決意。
次の計画を考え、僕は今からワクワクしております。

(終わり)

|

« 北アルプス/千丈沢~槍ヶ岳~天上沢 (廃道の谷歩き)-2 | トップページ | 『MonoMax 2月号』発売中 »

山(やま)」カテゴリの記事

コメント

新年おめでとうございます。
今年も楽しい(羨ましい)山歩話が読めそうで、、というか、既に読ませていただいていますが、、嬉しいです。
この旅でも短パンなのは、渡渉があるからですか?それとも、ヤーマンさんに触発??されましたかぁ(笑)
それにしても凄い山歩ですねぇ。
私には歩けない路なので、ここで拝見できると嬉しくて楽しくて、新年早々感謝です。。
麻生さんの酒調達、、よ~くわかるんです。
もう何十年も前のことですが、友と2人、関沢から雁戸経由で蔵王に抜けようと。
ところが、お互いに酒を持って来てないことが分かり、罵りあいながら北雁戸までは行ったのですが、即、走るような速さで関沢に降りて釣り堀で酒盛り、結局最終バスにも乗れず、山形駅まで歩いたことを思い出します。。
もう険しい山歩はできない私ですが、庄太郎さんの山歩話を楽しみに、そして今年も本を楽しみにしています。

投稿: 修 | 2013年1月10日 (木) 08時34分

修さま

あのくらいの渡渉のときはショートパンツのほうが歩きやすいから、足元以外はいつもと同じショートパンツ&タイツというスタイルです。
ロングパンツよりも水の抵抗が少ないし、水もそれほど冷たくはないし。場合によってはゲイターもつけて。
今回と似た歩き方になる場合が多い、ニュージーランドのトランピングスタイルのようなものですね。

麻生くんのエネルギー源はあきらかにアルコールで、それほど酒を飲まない僕には想像できないほど重要みたいで。
ただ、アルコールストーブのほうが燃費はいいようです。
アルコーブストーブのような男なんです。

投稿: 庄太郎 | 2013年1月10日 (木) 09時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 北アルプス/千丈沢~槍ヶ岳~天上沢 (廃道の谷歩き)-2 | トップページ | 『MonoMax 2月号』発売中 »